ご挨拶
気がつくと、AND ENDLESSと、西田大輔という人間と出会って随分の時間が過ぎています。
自分の環境も変わって、少なからず歳をとり、西田さんももちろん歳をとって
最初の頃の「気難しそうな人だなぁ。なんだか、話しかけにくいなぁ。」という印象も、だいぶ変わって、
今では、西田さんに対して劇団員も羨むほどのツッコミをかます程になりました。
でも、変わらないものもあったりします。
それこそ、初めてAND ENDLESSの公演を観て、何故か出演したり、ビデオをまわしたりと公演に参加するようになって、
今では、何の因果か、プロデューサーという大役を預かっていますが、ずっと変わっていません。
それは、僕がAND ENDLESSという西田大輔が作り出す世界のファンだということ。
この文章を、西田さんをはじめ劇団員に読まれると思うとかなり恥ずかしいのですが、、、
自分が胸を張って面白いと思えることを、一人でも多くの人に観てもらいたい。
これが、今日までここに居続けている理由です。
3年ぶりのSYNOPSIS TAKT 「海の上のピアニスト」。
何故この作品を選んだか、作品の一番の見所は、なんて書くつもりはありません。
勝手に、自分が一番観たいもの、面白いと思うことを西田大輔に投げつけてみました。
これを、西田大輔がどう打ち返してくれるのか?
正直、今から楽しみで仕方ありません。
皆さんと一緒に、劇場で楽しめたら、最高です。
劇場でお待ちしております。
AND ENDLESS プロデューサー 下浦 貴敬
西田さんが『海の上のピアニスト』をやるそうです。——久々に「これは何かが起きるかもしれない」と思いました。
第一に、他の作家による戯曲を演るということ。“オリジナル”や“新作”にこだわる風潮は、裏返せば既存の作品に
真っ向から立ち向かうチカラのないことを露呈してもいるという現状のなかで、この取り組みはひとつの挑戦です。
第二に、この戯曲が一人芝居であること。数十人のキャストを動かし、鮮やかな舞台を繰り広げて見事な西田さんがたっ
た一人で舞台に立つ。壮大な舞台を生み出すために使っているエネルギーをすべて自分の中に集中させ 放つことへのド
キドキする期待。バリッコという作家が描いた作品の中に、西田さんが何を見いだし、何を面白いと思い、彼自身の物語
としてとらえ、他でもない彼自身の身体を通して表現するのか。一人であるということは誰も頼れないし 何の言い訳もで
きないけれど、限りなく自由に 果てしなく深くやれるということなのだから、恐れることなく考えることのすべてを実現
して欲しいと思います。
第三に、海の上のピアニスト=ノヴェチェントはアーティストという特別な人間であること。トルナトーレの美しい映画
はやさしい眼差しで彼を描いていますが、ノヴェチェントが海の上で生まれ 一度も船を降りることがなかったということ
は何を意味しているのか。それは甘美なおとぎ話ではなく、そのまま現代の社会を生きるアーティストの現実にリンクします。
ノヴェチェントを演じていくなかで、アーティストである西田さんの生き様が必ずや見えるでしょう。
西田さん。いつも何千人もの観客に届けることを一番に考えてくれているあなたですが、たまにはその“親切”をやめて、
あなた自身の“真実”をその手に掴んでそのまま観せてください。もしかすると、その場のわたしたちは「?」に
なってしまうかもしれません。でもそれが“真実”であったなら、潜在意識のレベルには間違いなく「!」が届き、
決して忘れることのできない舞台になるはずだと思います。言葉にできない何かを受け取り、皆が自分自身の人生に思いいたるような。
ノヴェチェントは言います。
——ピアノの鍵盤は88キーだけ。でも、それを弾く方の人間は無限。
劇場の舞台空間も限られている。でも、そこで演じるあなたは無限です。
演劇評論家